翻訳のヒント[バックナンバー]

2017年11月 翻訳のヒント(英訳)- 「~側」の英訳

 今回は明細書、特に機械分野の明細書でよく見かける「~側」の英訳について取り上げます。

 例として次の文をあげてみます。

1.接地電極の自由端は高温になりやすいので、…… 溶融部にクラックが発生しやすい。

2.シャフト24はモータ21の下方に位置する第一ウォームホイール24aと …… とを有する。


 上の2例のうち、1.では接地電極という部材の一部を意図していますが、2.の例ではモータという部材の一部ではなく、モータの外部の場所(この例ではモータより下の位置)を意図しています。

 このように、「側」という日本語の使われ方は一通りではありません

 一方、翻訳者は、「側」= side、という固定観念から離れられず、「~側に」、「~側の」とあったら即、”on the side of …” という訳しか無いと信じて疑わない方がおられるようです。

 例えば、上の英文については次のように訳す方が多いのではないでしょうか。

1. “Since the free end side of the ground electrode is apt to have high temperature, …”

2. “The shaft 24 has a first worm wheel 24a positioned on the lower side of the motor 21 and ….”


 確かに上の2つの英文で、構造や、部材同士の関係が全くわからないということはありません。しかし、英語の sideには「側面」、「側部」、「横」などの意味もあります。前後関係や図面から、意味するところが明白である場合も多いとはいえ、一歩進んでよりよい表現はないか考えてみるべきでしょう。

 つまり、一旦、「側」= side、という固定観念から離れ、構造を表現する、という観点から考えてみると、別のより自然な英訳が出てくるのではないでしょうか?

 例えば、「接地電極の自由端」は「接地電極の自由端近傍」と解釈しなおすことができますし、「モータ21の下方に」は、単純に「モータ21の下方に」と考えることができます。

 どういう英文表現が適切かは、ケースバイケースで一通りではありませんので、単なる逐語訳でなく、「構造を英語で適切に表現する」ことを心がけましょう。



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