翻訳のヒント[バックナンバー]

2014年7月 翻訳のヒント(英訳) - 粒 particle vs. grain

 「粒子」や「粒」は"particle"や"grain"と英訳されますが、材料科学においては、"particle"と"grain"を異なる概念として使い分けています。セラミック関連の特許では、"particle"と"grain"の両方が同一の明細書で使われることもあります。これらについて確認しておきましょう。

1.particle
 particleの語源は「小さな部分」です。砂の粒(particles of sand)、素粒子(elementary particle)等、particleを用いて表現されます。セラミックス製造の原料となる粉体は多数の粒子の集合体ですので、この「粒子」はparticleと表現されます。例えば、粉体の平均粒径(粒度)、粒度分布はそれぞれ、"mean particle size"、"particle size distribution"と訳されます。
 参考までに、「微粒子」には同様の語源を有する"particluate"が使われます。大気汚染でおなじみのPM2.5のPは"particulate"の"p"です。

2.grain
 grainの元来の意味は穀類や種子の粒ですが、材料科学においては結晶粒を意味します。上述のセラミックスの原料粉体を焼成すると得られた焼結体には、多数の結晶粒が見られます。これら多数の結晶粒間の境界は「粒界」と呼ばれ、皆さんも顕微鏡写真でご覧になったことがあるでしょう。この場合の「粒」は"particle"ではなく"grain"です。「結晶粒径」、「粒界」に対しては"crystal grain size"、"grain boundary"が技術用語として確立されており、"crystal particle size"、"particle boundary"とは訳されません。
 かなり大雑把ではありますが、砕いた小片(粉体)は"particle"、硬い固体を構成する小さな単位は"grain"とイメージしておくとよいと思います。

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