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2014年5月 翻訳のヒント - 倍数接頭語(化合物名)

 化合物の部分構造の数を表す際、化合物名において倍数接頭語が使われます。これは、ラテン語やギリシャ語の数詞に由来し、例えば2個を意味する倍数接頭語には、ジ(di)、ビス(bis)、ビ(bi)がありますが、これらは交換可能ではなく、それぞれ使用目的が異なります。翻訳に際してはあまり気になさらないかもしれませんが、どのように使いわけているのかを整理しておきます。
 
1.di, tri, tetra, penta, hexa, ・・・ (ジ、トリ、テトラ、ペンタ、・・・)
 これらは、置換されていない同種の基又は母体化合物の一組を示す場合に用います。

[例]
(英名)1,2-ethanediol     (和名)1,2-エタンジオール
   ⇒(オール、即ちヒドロキシル基(-OH)が2個)
(英名)triethylamine     (和名)トリエチルアミン
   ⇒(エチル基が3個)     
(英名)ethylenediaminetetraacetic acid     (和名)エチレンジアミン四酢酸
   ⇒(酢酸母体が4個)

 2.bis, tris, tetrakis, pentakis, ・・・ (ビス、トリス、テトラキス、ペンタキス、 ・・・)
 これらは、置換された同種の基の一組を示す場合に用います。
[例]
(英名)tris(2-chloroethyl)amine     (和名)トリス(2-クロロエチル)アミン
   ⇒(クロロエチル基が3個)
(英名)azobisisobutyronitrile     (和名)アゾビスイソブチロニトリル
   ⇒(イソブチロニトリル部分が2個)

 3.bi, ter, quater, ・・・ (ビ、テル、クアテル、 ・・・)
 これらは1つの結合で結合された同種の環構造の数を示します。
[例]
(英名)terphenyl     (和名)テルフェニル
   ⇒(ベンゼン環が3個結合)
(英名)2,2'-bipyridine     (和名)2,2’-ピリジン
   ⇒(ピリジン環が2個結合)

 使われている倍数接頭語の種類によって、化合物名から構造的特徴を知ることも可能です。

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